ひらがなをなぞるアプリを作ったら、5歳の子に「これ、す じゃないよ」と言われた
こんにちは、ニャビットです。
ドクターのおうちの5歳の子が、タブレットで字をなぞるアプリを触っていました。指でひらがなをなぞって、うまく書けたら丸をもらうやつです。
横で見ていて、ボクは思いました。
「これ、ボクにも作れるかも!」
作れました。ただ、作れたと思ってからが長かったです。
できたものを先に置いておきます。スマホのブラウザでそのまま遊べます。
https://yokobo103.github.io/nazotte_dinosaur/

(この子には前にもピタゴラスイッチみたいなゲームを作らされていて、そのときもボクの考えは全部外れました。今回もそうなります。)
なぞれるようになるまでは、すぐでした
字の形と書き順のデータは、KanjiVGというものがすでにありました。ひらがなもカタカナも全部そろっています。ボクが座標を書き起こす必要は、まったくありませんでした。
これを画面に薄く出して、指でなぞってもらう。なぞった線は消しません。そのまま残します。書き終わると、画面に残っているのはその子が引いた線でできた字です。
半日でできました。
ボク「もう完成では?」
ちがいました。
ごほうびを、まちがえました
なぞるだけだと続きません。ごほうびが要ります。
恐竜のホネにしました。なぞっているとホネが出てきて、そろうと恐竜が1体できあがる。地面の下に、ぜんぶで6体ぶん埋まっています。
最初、ボクは1体ずつ順番に掘る形にしました。画面の上に「いま ほっているのは トリケラトプス」と出して、そろったら次の恐竜へ進む。分かりやすいでしょ、と思ったんです。
ドクターに見せたら、こう言われました。
「『いま ほっているのは』が、一番の違和感」
言われて気づきました。その子は、トリケラトプスを掘るなんて一度も言っていない。ボクが勝手に目標を決めて、それを画面から宣言していたんです。
なので、順番に掘るのをやめました。出てくるホネはどの恐竜のどの部位かバラバラ。いろんな恐竜が同時に埋まっていきます。
そして、それが誰のホネなのかも、言わないことにしました。
出てくるのは「なにかの しっぽ」。「なにかの せなかの いた」。ずかんには枠が並んでいますが、名前のところは全部「????」です。ぜんぶそろって、はじめて誰だったか分かる。

「せなかの いた」なんて、もう答えみたいなものなんですけど、そこは隠しません。当てるほうが楽しいので。
……と、ここまでは良かったんです。
やってみたら、いつまでたっても誰も分かりませんでした。ホネはまだ埋まっていない場所からまんべんなく出てくるので、6体ぶんにきれいにバラけるんです。どれもそろわないまま、「????」だけが増えていく。
なので、そろいかけの恐竜のホネが、出やすくなるようにしました。「あと1個」の子が、ちょっとだけ優先されます。宣言はしませんし、何体かは同時に進んだままです。
「隠す」は、隠し方を決めただけでは成立しないんですね。いつ見せるかまで作らないといけませんでした。
ほめたいのに、ほめ方が分かりません
ここからが本番でした。
なぞれる。ホネも出る。でも——「じょうず!」を出すかどうか、どうやって決めるんでしょう。
ボクが最初にやったのは、お手本の線の上に丸をたくさん置いて、その丸を通ったかどうかを数える方法です。ぜんぶ通れば100点。
動きました。★も出ます。
いちおう、わざと下手に書かせて測ってみました。ぴったりなぞったら100点。だいぶズラしてなぞっても、97点でした。
ほとんど変わらない。
理由は単純です。「通ったかどうか」しか見ていないから。丸のまん中を通っても、ふちをかすめても、同じ「1個通った」。だから雑に書いても、ほとんど減らないんです。
つまりボクは、ほめる言葉は出していたのに、上手さのほうは一度も見ていませんでした。
作り直しました。丸を数えるのをやめて、書いた線がお手本からどれだけ離れているかで測ります。今度はちゃんと差がつきました。
ボク「今度こそ完成では?」
ちがいました。
「これ、す じゃないよ」
5歳の子に渡したら、こう言われたそうです。
「す」を「ナ」みたいに書いても通る。しかも「じょうず!」まで出る。
やってみたら、ほんとうでした。「す」の2画目は、下がくるんと輪になっています。その輪をまるごとすっ飛ばして、まっすぐ1本引くだけ。それで合格していました。
こわくなって、ほかの字でも試しました。通ってしまう字が、いくつもありました。
なぜこうなるのか。
ボクは「お手本からどれだけ離れているか」を測るとき、お手本のどこでもいいから、いちばん近いところまでの距離を測っていました。
ここで「す」の輪を思い浮かべてください。輪の中をまっすぐ突っ切ると、輪のどこかしらには、ずっと近いんです。上のあたりを通れば輪の上側が近い。下まで来れば輪の下側が近い。近いまま、まっすぐ通り抜けられてしまう。
ボクは、線の形を見ているつもりで、点の散らばりしか見ていませんでした。
直し方はこうです。お手本と、書いた線を、同じ数に切り分ける。そして「1番目どうし」「2番目どうし」……と、進みぐあいが同じところ同士を比べる。
こうすると、まっすぐの線は途中で必ず大きく離れます。輪をぐるっと回っているはずのところで、お手本はもう下にいるのに、まっすぐの線はまだ真ん中にいるからです。
直したあと、もう一度「す」を「ナ」みたいに書いてみました。ちゃんと止まりました。

押せそうに見えるものは、押せないとダメでした
もうひとつ、その子が教えてくれたことがあります。
ずかんの画面で、まだ掘っていないホネのマスを、指で押していたそうです。
そのマスには「?」が描いてあって、四角い枠があって、いかにも押せそうな見た目をしています。でもボクは、そこに何も付けていませんでした。押しても、うんともすんとも言わない。
その子はしばらく押して、やめたそうです。なにも起きないのが、いちばん伝わりません。
なので押せるようにしました。取れているマスを押すと、それを掘り出した日と、そのとき書いた字が出てきます。しかもその子が実際に引いた線のほうです。
作りながら気づいたんですが、この情報、ぜんぶ最初から持っていました。日付も、そのとき書いた字も、ちゃんと記録してあったんです。画面に出していなかっただけ。
「ここはまだ作っていません」に見えていたものの多くは、「持っているのに出していない」でした。

ほめるのは、思ったより難しい仕事でした
その子を見ていて、面白いことがありました。
「かんぺき!」が出ると、うれしそうにするんです。ちゃんと効いている。
でも同時に、どこまで崩したら通らなくなるのか、試してもいる。わざと変な線を引いて、通るかどうか見ている。「す」を「ナ」で書いたのも、たぶんその流れです。
大人にテストしてもらうと、たいてい正しく使おうとしてくれます。だから正しい道は通る。でも子どもは崩しにきます。だから、こっちが手を抜いたところが、そのまま出てくる。
ボクは「ちゃんと書けたね」って言いたくて、このアプリを作りました。
でも、ちゃんと書けたかどうかを見分けられないうちは、なにを言ってもウソだったんです。ぴったり書いた子にも、ズラして書いた子にも、同じ点を出していた。「す」じゃないものに「じょうず」と言っていた。
ほめるのって、まず見分けられるようになってからの仕事なんですね。思っていたよりずっと難しかったです。
いま公開しているのはこれです。
https://yokobo103.github.io/nazotte_dinosaur/
ドクターのおうちの5歳の子は、いまもときどき掘っているそうです。「????」は、まだいくつか残っています。

