当ラボには、これまでの実験で生まれたゲーム、3D、AIツール、Webプロトタイプが少しずつ増えている。
発見ログは「読む場所」として育ってきた。一方で、実際に遊べるものへ行こうとすると、それぞれのリンクを探さなければならない。そこで、ラボで生まれた世界へすぐ遊びに行ける、アーケードのようなページをつくる実験を開始した。
名前は「体験格納庫」。GPTとイメージを確認し、Claudeにデザイン仕様をつくってもらい、Codexで実装するという複数AI体制で進めた。

最初期のイメージには、ごちゃごちゃした研究室、たくさんの小物、強いキラキラ感が入っていた。この時点では、私自身も何に惹かれているのかを、まだ正確には言葉にできていなかった。
そして今回、ページをつくるうえで極めて重要なことが判明した。
> 私が欲しかったのはランダムな派手さではなく、意図してつくられたごちゃごちゃ感、キラキラ感、わくわく感。そして、その世界へ踏み出したくなる物語だった。
整っている。でも、わくわくしない
最初につくったのは、公開中の体験がカードで並ぶ一覧ページだった。カテゴリで探せて、情報も読みやすい。リンク集としては成立している。

しかし、画面を見たときに何かが違った。
整いすぎていたのである。
同じ形のカードが規則正しく並ぶと、研究室というより普通のカタログに見える。そこで、カードへ紙、チケット、付箋、シール、スタンプのような装飾を加え、光り方や重なり方にも差をつける案を試した。
このとき最初の気づきがあった。
欲しいのは「ランダム感」ではなかった。
カードを適当に傾けたり、大きさをばらばらにしたりすれば、確かにごちゃごちゃはする。しかし、それは発見の楽しさではなく、単に見づらい画面になりやすい。必要だったのは、体験ごとに小物、光、質感、重なりの密度を変える、意図のあるごちゃごちゃ感だった。
そこで、カードの見た目を毎回ランダムに変えるのではなく、それぞれの体験に結びついた装飾として固定した。ゲームらしいもの、道具らしいもの、妙にキラキラしているもの。違いはあるが、違い方には理由がある状態である。

これはかなり重要な発見だった。わくわく感は、無秩序から生まれるとは限らない。設計された密度差があるからこそ、「次は何だろう」と見て回りたくなる。
手直ししても消えない違和感
それでも、まだ違和感が残った。
当初のトップ画はマジシャン風で、体験が魔法の研究室の奥にある箱として並んでいた。見た目はそれっぽい。カードの演出も増えた。それなのに、何度手直ししても「これだ」という感じにならない。
ここで、二つ目の気づきがあった。
> もしかしたら、問題は見た目ではなくストーリーにあるのかもしれない。
装飾が足りないと思っていたが、そもそも「箱を保管して、棚から選んで、開ける」という物語が、今回つくりたい体験と少しずれていた。
ラボの成果物は、棚にしまって眺めるものではない。その先にゲームや3D空間があり、実際に別の世界へ行ける。必要だったのは保管庫より、出発地点だったのである。
箱を開ける場所から、世界へ転送する場所へ
そこで、中心コンセプトを大きく変更した。
変更前
魔法の研究室 → 箱を選ぶ → 箱を開ける
変更後
ニャビットに案内される → 転送先を選ぶ → 別の実験世界へ行くページ名の「体験格納庫」は残しつつ、中身を複数世界につながる転送室へ変えた。

すると、それまで個別に悩んでいた要素の方向が一気に揃った。
- 紙のカードは、金属製の転送パネルになった
- サムネイルは、転送先をのぞくポータル窓になった
- 「体験する」「箱を開ける」は、「転送する」になった
- 一般的な保存用の星は、当ラボらしい肉球ボタンになった
- ヒーロー画像は、魔法の倉庫から青く発光する転送室になった

見た目をSF調へ変えたこと自体が重要なのではない。
「ここは何をする場所なのか」が決まったことで、カード、ボタン、言葉、キャラクターの役割を同じ方向へ向けられたことが重要だった。
スマホでも、物語の主役を守る
転送室がまとまった後も、スマホでは問題が発生した。PC用の構図をそのまま縮めると、情報パネルがニャビットの顔を隠してしまったのである。
以前なら、余白や高さだけを調整していたかもしれない。しかし今回は、ニャビットに案内されることがページの物語に組み込まれている。顔が見えないのは、単なるレイアウト崩れではなく、案内役が不在になる問題だった。
そこで、スマホ用の背景とレイアウトを別に用意した。情報パネルの占有範囲と背景内の人物位置を一緒に調整し、ニャビット、転送床の光、入口としての情報を同時に見せる構成にした。
ストーリーが決まると、何を守るべきかも決まる。この事象でも、その有効性を確認した。
今回の実験で判明したこと
私は最初、画面の違和感を装飾の問題として直そうとしていた。
しかし実際には、二つの段階があった。
一つ目は、ランダムに崩すのではなく、意図して密度差をつくること。
二つ目は、それでも違和感が消えないなら、見た目の奥にあるストーリーを疑うこと。
今回の方針転換で最も大きかったのは、魔法風からSF風へ変更したことではない。「箱をどう飾るか」という問いをやめて、「ここから、どこへ行きたくなるのか」と問い直したことだった。
完成した体験格納庫は、単なるリンク一覧ではない。ニャビットに案内されながら、別の実験世界へ転送される入口になった。
デザインを何度直しても違和感が消えないとき、足りない装飾を探す前に、その画面がどんな行動と気持ちを生む物語なのかを確認する。
今後の実験でも使える観点として、記録しておく。(Dr.よこぼ)



